自然界の形と質を表す十干は、五行・本能・方向等で分類することにより、それぞれの意味が成立します。

十干は甲乙丙丁戊己庚辛壬癸(こう、おつ、へい、てい、ぼ、き、こう、しん、じん、き)と表され、五行の性質を加えて次のように呼称します。

甲 こうぼく
乙 おつぼく
丙 へいか
丁 ていか
戊 ぼど
己 きど
庚 こうきん
辛 しんきん
壬 じんすい
癸 きすい

また、これらは陽干と陰干に大別されます。

陽干は、甲木・丙火・戊土・庚金・壬水です。陽干は従気不従勢といい、精神性に従いやすく、現実性には従いにくい性質です。

陰干は、乙木・丁火・己土・辛金・癸水です。陰干は従勢無情義といい、現実性に従いやすく、精神性に従いにくい性質です。

次に、各々の性質について見ていきましょう。

甲(こうぼく)

甲木は陽木性で、自然界にたとえるなら樹木、剛木です。強くまっすぐな性質となります。

樹木は天に向かって真っ直ぐ成長します。時期が来れば高い棟の強い材料になりますが、タイミングを失うと朽ちて廃材となってしまいます。

他の五行との相性では、金性が多すぎると斧に刻まれるように四散して形を留めません。水性と火性は成長に欠かせないのですが、水性が多すぎると漂流してしまい自立できない、火性が多すぎると自らが燃えて身を失います。

一方で、金性の厳しさがないと意気盛んになりすぎ、自信過剰となってまっとうな生き方ができなくなります。

天に届かんばかりに伸びる勢いがあり、一度倒れると二度と立ち上がれませんが、風雪に耐える力は相当に強いものです。

乙(おつぼく)

乙木は陰木性で、自然界にたとえるなら草木、柔木です。潤いがありしなやかな柔軟性を持ちます。

それゆえに協調、調和に力を発揮して、集団行動が得意です。何度挫折しても立ち上がる執念深さは相当のものがあります。

時を得れば開花して、誰もが羨むような立場を得ますが、時を失えば枯れ草となり、誰にでも蹂躙されるままのような事になります。

粘り強さが持ち味ですから、粘りを失えば役に立ちません。粘りを失わせる金性を嫌い、適度な水性と火性を最も喜びます。

丙(へいか)

丙火は陽火性で、自然界にたとれば、太陽です。いさぎよくきらびやか、激しく厳しい性質があります。

太陽は地上の要望に関係なく一方的に照りつけるため、行動や表現は一方的になりやすいです。時を得れば、万物がその輝きの恩恵にあずかることが出来るのですが、時を失うと、輝きが一方的であるだけに、容赦なく照りつけ万物を苦しめます。

そのため、水の制御を必要とします。水性があれば、一方的な質が調節され適度な能力を発揮できるのですが、水性のない丙火は人の心が理解できず、将来性がなくなります。

方向転換や変身をとげることもできます。大胆と小心の面を交互に見せることがあり、その差が激しいのが特徴です。

丁(ていか)

丁火は陰火性で、自然界にたとえれば灯火、陰火です。他人を気を引いたり、まどわせたりする態度があり、一方で従順な性質があります。

灯火は暗所を明るくしたり、物を焼き尽くしたりするように、おだやかに見えてすばしっこい所があります。人の上に立ち他人の目標ともなりますが、傲慢になると他人を巻き込んで他人を破壊します。空にあれば星光のように、指針や情緒の役目となり、地にあれば暖炉や廉金のための有用の火となります。時を得れば、洞察力に優れ指導性を発揮しますが、時を失うと、人の心を傷つけ捻じ曲げてしまうのです。

用意周到とわがままさが混在します。水性の影響が大きければ、火性は消滅し、存在できません。火源である木性を必要とします。

戊(ぼど)

戊土は陽土性で、自然界にたとれば山、山脈です。激しくドライで雄大な性質です。

山は外から眺めていれば雄大な景観ですが、山の中に軽々しく入れば危険がいっぱいであり、細心の注意を必要とします。行動は、内面は繊細で、外面は大雑把です。神経の働きは細かく、態度は豪放となります。

時を得れば、豪放で悠々たる態度で周囲の手本となり、リーダーの役目を果たします。時を失えば、優柔不断、自己の欠点を他人のせいにして省みることがありません。そのため、幸運な人と不運な人の差が激しいのです。

大器であるため、幼少期より鍛えられることが必要であり、五行では木性を必要とします。

己(きど)

己土は陰土性で、自然にあって田園、平地とする。性質は平穏温厚、心が広く従順です。

どこまでも広がる田園は、のんびりして、おだやかな情景を見せ、五穀の豊穣を約束します。五行のうち、木・火・金・水を包括しており、調整します。

時を得れば、慈愛をもって万物を育成し発展させます。時を失えば、狭量な人間性になって万物の成長を拒絶し、人々を苦しめます。

世の中からは、平穏で、善良であることが求められます。水性が多くなれば洪水で長年の不作を呼び込み、火性が多くなれば砂漠と化し、金性が多くなれば瓦礫の山をつくることになります。四つの気を平均的に持つことが望ましく、どこか一方に寄ってしまうと苦労します。

庚(こうきん)

庚金は陽金性で、自然界にたとえると鉱石・鉄鋼・刀剣です。剛で粗暴、鋭利な面と鋼のような強靭さを持ちます。

斧となって力を振るうときは、樹木を倒し原野を耕地に変えます。葛藤を乗り越え、活路を切り開く能力は抜群です。目的なく勝手気ままに行動すると粗雑で言うことをきかず、破壊と混乱を招く恐れがあります。

時を得れば、困難に対処する能力に優れ、周囲からは英雄視されます。時を失えば、平和を破り混乱を喜ぶ人のようになり、周囲から嫌われます。自己に非があっても折れることができず、他人を屈服させようとします。

その攻撃性を有効なものとするには、火性を必要とします。

辛(しんきん)

辛金は陰金性で、自然界にたとえるなら、宝石・貴金属です。宝石が醸す、光と輝き、冷たさ、眼を射るような鋭さがあります。

柔和な中に剛があり、優しく穏やかな態度の中に厳しさを持ち、他人を魅きつけておきながら、ある一定までくると寄せ付けない面があります。庚金とは逆に平和を好み、世の中が安定すると活躍します。

時を得れば、研かれた宝石や貴金属の様に光沢を放ち、周囲の願望を一身に集め名誉を得ます。時を失えば、石ころと同じく飢えを凌ぐ一糧にもなれず、ただ夢を追う旅人となって、時が過ぎるのを待つだけとなります。

水性によって洗い清められることにより輝きが増し、人心や時代を見抜く目を持てます。

壬水(じんすい)

壬水は陽水性で、自然界にたとえると海・湖・大河です。潤いを湛えて大らかな性質です。

海は海水をたくわえて涸れることがありません。船を浮かべ人や物を運ことができます。平穏な時は船上の人たちを楽しませますが、暴風となれば船もろとも人や物を海中に飲み込んでしまいます。器は大きいのですが、良い面と悪い面の両極を備えているのです。

時を得れば、創造、改革により、社会や国を発展させる原動力となり、不満分子を一掃する力を出します。時を失えば不満分子をひとつにあつめ、反体制組織をつくり国の病巣となります。創造・改革が破壊作用ともなるのです。

壬水は寛大な度量を持てることが必要であり、それができれば、才智は豊かで生活に困ることは少ないです。

癸水(きすい)

癸水は陰水性で、自然界にたとえると、雨水・川・雪。しっとりとして暗く重い性質です。

癸水は万物の育成に欠かすことができないのですが、余分にあっても欠乏しても害となります。本質的に知性を備え、学問を生み出す力となり、企画や参謀などの能力ともなります。

時を得れば、学問・技芸に長けて慈悲心が厚く、臨機応変に物事に対処し大成します。時を失えば、知性は愚直に学ぶだけとなり自立することができません。自己満足が強く出て、周囲の迷惑を省みなくなります。

癸水の行動は純粋で、水源である金性と流出先の木性を求めて清流となります。そのときは、誰からも求められる存在となって生きて行きます。

“源”について

丁火の説明に火源、癸水の説明に水源という言葉がでてきます。火源は木性、水源は金性です。これは五行循環、すなわち木→火→土→金→水と気が巡り、森羅万象を形成するとき、生じていくものが生じられるものの源になるとの考えるからです。木源や土源、金源という言葉はありませんが、各々の源を考えると五行の循環が理解しやすいのではないでしょうか。

この記事の監修者

朱学院校長佐藤直樹

東京・上野に生まれる
早稲田大学高等学院、早稲田大学商学部卒業
10代より算命学を始め、奥義を習得、さらなる算命学の発展を目指す。