「気」という文字の原義は「气」と「米」が一緒になったものです。つまり、米を蒸すときに上がる湯気をあらわしているのです。ここから空間を満たすものという意味に発展して、広い範囲に応用されるようになりました。

そして「気」という文字は人間の心に係わることから、天地間の自然現象にまで広がります。人間に関するものとしては、「やる気がある」とか「気が短い」などのように、人間の精神の状態を表すものとして「気」を用いており、心・気持ち・性格等の代表として「気」は非常に多く使われています。

気力・元気・気位・正気・気性・病気・気質・怒気・勝気・勇気・根気・気分・活気・才気・邪気・気運・気楽・士気・和気あいあい・意気込み…………など、数え上げたらきりがないほど、「気」は多く使われているのです。
人間に関すること以外でも頻繁に使われ、自然現象や社会現象などは、「気」という言葉がなかったら日本語が成り立たないほど。
天気・気候・気象・空気・乾気・湿気・気体・水蒸気・磁気・湯気・気温などの自然現象を表す言葉や、景気・不景気・雰囲気などの社会現象に用いる言葉は誰もが使っているものです。

これだけ多くの「気」という文字が使われているのに、あらためて「気とは何か?」と問われたら答えられる人はほとんどいないのではないでしょうか。しかも残念なことに現代では「気」についての研究がほとんどされていません。「気」についての考察は、古くから中国で進められており、陰陽・五行・十干・十二支などは「気」の考え方が基本になっています。
十干、十二支が紀元前一五〇〇年(今から約三五〇〇年前)頃の殷の時代の出土品に描かれていることから、それより前の時代、約四〇〇〇年位昔から「気」についての考え方が確立していたと推定することができるのですが、これは、十干、十二支は単に十進法・十二進法という数学的な意味だけでなく、「十干十二支」で示したとおり「気」という思想が無かったら成立しなかったものだからです。

殷の時代にすでに十干・十二支が存在していたということは、それより前の時代に「気」の考え方があったということでしょう。

時代は下って、紀元一〇〇〇年頃、宋の時代の儒学者、程伊川や、朱子学の創立者である朱熹(子)は、「気」について研究しており、「気」とは万物生成根源の力となるもの、「元気」と説明しています。

「気」は、万物生成の原理で、宇宙万物のもとになる原質であると解説しており、さらに朱熹は原理二元論を唱え、「気」を陰気と陽気に分けて解いています。算命学は特に「気」について深く研究しており、その思想の基本になるのは「気」の概念。従って算命学の考え方を説明するためには、まず「気とは何か」について知らなければならないのです。

この記事の監修者

朱学院校長佐藤直樹

東京・上野に生まれる
早稲田大学高等学院、早稲田大学商学部卒業
10代より算命学を始め、奥義を習得、さらなる算命学の発展を目指す。